Kia Ora! わかです。
今朝、働いている牧場で一頭の若い牛が亡くなりました。彼女はまだ2歳で、今年初めて赤ちゃんを産み搾乳を始めたばかりでした。
第一発見者として、できることが確実にあった。でもできなかった。それは、どうするべきかを知らなかったから。目の前で牛が死ぬのがこんなに悲しいなんて。何も知らない私は、何もできずにただ慌てるだけ。無知は無力だ。
このやるせない心を整理するため、これからの仕事にしっかり向き合うために文章に綴ろうと思います。
牛小屋での搾乳が終わったら、牛たちはpaddock(放牧で使用している草原のこと)に帰ってゆきます。牛たちが帰ったあと、牛小屋を掃除して、そのあとpaddockのドアを閉めにいくのが私の仕事です。
いつも通り、ドアを閉めにいったら10頭ほどの牛たちがpaddockの外に出ていました。好奇心旺盛な若い牛あるあるです。車をブンブン鳴らしてもびくともしない彼女たち。。私は車から降りて、歩いてみんなを連れていくことにしました。たいていの牛は人間が近づくのを怖がって逃げるので、こういう時に誘導するのが意外と意外とカンタン。でも2頭ほど、撫でてもらうのが大好きな甘えんぼさんたちがいました。その子たちをなだめるのにまあ時間がかかった。「撫でて撫でて」で全然前に進もうとしない。まあなんやかんや時間をかけてなんとか全員をpaddockに閉じ込めることに成功。ついでに、(個人的に)仲の良い牛たちに挨拶しようと、paddock内を歩き回っていた時。。
地面に横たわっている牛が目に入りました。しかもたくさんの牛たちが周りを取り囲んで、彼女のことをじろじろ見たり、匂いを嗅いだり、とにかくあの一帯、なんだかおかしい。彼女に近づくと、明らかな異変を感じました。横向きに倒れ、足はほぼまっすぐ宙に浮いていて、お尻の穴が真っ赤に開いていて、苦しそうな表情。かろうじて足だけがピクピク動いている状態でした。一瞬、死んでるかと思ったけど、その時は確実に生きていました。宙に浮いた状態とは言いつつも、まだ足を動かせいてたから。
とにかくすぐにオーナーに電話しました。英語でなんて言えば良いのかわからないけど、とにかく彼女の状態が良くないからすぐに来て。と。
paddockまでは車を使っていますが、一台の車をオーナーと共有させてもらっているので、オーナーを迎えにいくべく私も一旦その場を離れ、牛小屋まで戻ります。
そしてオーナーと合流。彼女の状況を説明しながら車を走らせていると、できることはそんなにないかもしれない、と言われました。その時は言っている意味を理解できなかった。
paddockに到着し、彼女のもとまで戻ったときには、時すでに遅し。亡くなっていました。
ショックでした。
最初に発見した時、死という可能性が一瞬よぎりつつも、まさかないない、さっきまでミルキングしてたし、変わった様子はなかったから、きっと大丈夫、オーナーを呼んだらなんとかしてくれる。と思っていました。
これまでにも牛が亡くなるという経験はしてきました。でも目の前でではなかった。私の知らないところで、いつの間にか亡くなってしまっていた。目の前でなくなるのは初めての経験だった。牛の死を初めて間近で実感して、本当にショックだった。牛の体はとても強くて、どんなに強くぶつかったり転んだりしても平気なんだっていうところをいつも見ていました。さっきまで普通だった子が、急にあんなふうになることもあるんだって。
オーナーが言っていた死因は、ミルキング後お腹が空いて一気に食べたことで胃にガスが溜まって内臓を圧迫したこと。若い牛にたまにあることらしい。だから苦しんでいる状態の時に、お腹にナイフを刺せば、ガスが抜けて助かる道があったかもしれないと。
涙が止まりませんでした。
ああ、何にも知らないって、何にもできないんだ。
でも、知っていたとしても実行できてた?多分、99%無理。やったことがないし、やっているところを見たこともない。そもそも治療用のナイフなんて持ち合わせていない。だからせめてもっと早く発見できていれば。paddockの外に出ていたnaughty girlsをもっと早く動かせていれば。今となってはそう思う。
私は牛のプロじゃない、ただのアルバイト。数ヶ月ここにお世話になっているだけの人間だから、牛の処置ができなくたって、それは仕方がない。でもそれ以外にもできることがもっとあるんじゃないか?ただ牛を可愛い可愛いするだけじゃなくて、もっと注意深く彼女たちを観察しないとダメだ。もうこんな思いをしたくない。命に終わりが来ることは知っている。ただみんなにできる限り元気に生きてほしい、毎日おはよう、今日も元気?って言いたい。
全ての分野に通ずることだけど、何も知らなければ何もできない。だからこそ新しいことを知ったり挑戦したりするのはエキサイティング。全てが学びだからだ。明日もみんながいつもと変わらない1日を過ごすために、私は学び続けたいし、行動し続けたい。